病院精神医療の展開
入院患者の生活とそのあり方
金子 嗣郎
1
1都立松沢病院
pp.342-344
発行日 1981年4月1日
Published Date 1981/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207449
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「精神病院で一番困ることは,入院して居る人から見れば,何も仕事のないことである.仕事さえあれば,一日を暮らすには,何んら退屈も感ぜぬのであるが,仕事なしに一日を暮らすことは,随分苦しいことである.そこで,ひとりで何か仕事をする,逃走の仕度をするとか,喧嘩をはじめるとか,大声を出すとか,つまり病院の中では,その取締りに困ってしまうことになる.
また,何もせずに日を暮らして居れば,一日二日と経ち,百日二百日となれば,それに慣れて,全く室内に蹲っているようになる.従って,病院の中では蹲っている人と,騒いでいる人と何処を見ても,不秩序,乱脈な状態となってしまうのである.これを室外につれ出して,散歩させようとすれば,何処まで逃げ出してしまうか解らないから,結局病棟の中に入れ放しということになる.こんな状態を精神病院だと思っている人が幾らもある.これは精神病院を誤解していることであり,又,精神病院自身がその患者の取扱いを間違えているといわなければならぬ.」
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