今月の主題 内科医のための癌治療のオリエンテーション
末期癌患者のケア
痛みのコントロール
水口 公信
1
1千葉大学医学部・麻酔学講座
pp.288-291
発行日 1989年2月10日
Published Date 1989/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222329
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わが国における癌患者の死亡率は年々増加し,1年間に18万人が死亡している.そのうち癌に起因する痛みは30%であり,進行癌になると70%の癌患者が痛みに悩んでいる1).近年,オピオイド・レセプターの存在が明らかになり,麻薬系・非麻薬系鎮痛薬の開発が進み,より副作用の少ない,強力な鎮痛薬や鎮痛方法の導入が行われている.
一方,1962年イギリスにホスピス運動が盛んになり,痛みをもつ末期癌患者の疼痛に長期間のモルヒネ経口投与が劇的な効果を示すことが判明した.今まで,疼痛治療は無視され,患者の情動も誤解されて来たが,患者の病気に対する知識が増し,治療に際してよく情報を与えて諒解を得るなど,医師が患者との関係を良好に保つ必要性が起こって来た.そのため癌患者の身体的・精神的な両面からのこまかい配慮が強調され,quality of lifeの概念の下に全人的医療が行われるようになった.そこで筆者が経験した事項を中心に末期癌患者の痛みの対策について述べる.
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