特集 疼痛・興奮・譫妄
4.集中治療患者の痛みの疫学―痛みの認知とコントロールに向けて
江木 盛時
1
Moritoki EGI
1
1岡山大学病院 集中治療部
pp.29-33
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100615
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痛みは,組織損傷が生じた際,または組織損傷が起きる可能性がある際に生じる不快な感覚や不快な情動体験と定義されている1)。痛みは,患者がその苦しみを訴えて初めて他者に認知されるものである。しかし,集中治療患者の多くは,意識レベルの低下,人工呼吸器管理下,鎮静薬の使用などの影響により自らの痛みを訴えることができない状態にある2)。故に,集中治療医は,痛みが生体に与える影響を理解するとともに,患者が痛みを訴えることができない状況にあっても,Behavioral Pain Scale(BPS)やCritical-care Pain Observation Tool(CPOT)で評価したり,患者の動きや反応などを頼りに患者の痛みを認知する必要がある。
Summary
●集中治療患者の痛みは内分泌系・交感神経系を賦活し,代謝系から免疫系に至るまで多彩な影響を与える。
●集中治療患者の痛みは,心的外傷後ストレス障害の発生や回復後の生活の質など長期的な予後にも影響がある。
●集中治療患者の痛みの原因や種類は多彩である。
●集中治療患者は痛みを訴えることができない場合が多く,安静時であっても約半数が痛みを感じている。
●集中治療患者の痛みの評価がいまだに適切に行われていない施設も多く,そのため処置に伴う痛みに対して適切な鎮痛が行われていない。
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