増刊号 診断基準とその使い方
VII.血液
7.不応性貧血と骨髄異形成症候群
吉田 弥太郎
1
,
小熊 茂
1
,
山岸 司久
1
,
内野 治人
1
1京都大学医学部・第1内科
pp.2016-2019
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221986
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■疾患概念と疫学
不応性貧血は狭義には原発性に赤芽球過形成髄を呈し,かつ治療不応性の貧血を指す.広義には骨髄異形成症候群myelodysplastic syndrome(MDS)の中の貧血を主とする病態,すなわち狭義の不応性貧血refractory anemia(RA),環状鉄芽球を伴う不応性貧血RA with ringed sideroblasts(RARS),芽球増加を伴う不応性貧血RA with excess of blasts(RAEB)などを含めると理解される.ここでMDSとは,骨髄低形成によらない原因不明の血球減少で,しかも異形成dysplasiaと総称される一連の血球形態異常を呈する病態を指す.
不応性貧血もMDSも主として高年齢層にみられ,しばしば急性非リンパ性白血病を発症するが,感染や出血などの骨髄不全死も白血病化に劣らず多発する.血球減少のほかにも血球機能の障害が知られ,しかもこれら血球の量的質的異常がしばしば複数血球系にみられるので,その本態は多能性造血幹細胞の異常に基因すると考えられる.血球減少は骨髄低形成によるのではなく,血球産生と分化とが障害されるためである.造血の面では,幹細胞から成熟血球に至る過程での血球死滅すなわち無効造血であり,無効造血はまた血球分化からみれば分化異常として把握できる.
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