増刊号 診断基準とその使い方
V.内分泌
31.低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病
松本 俊夫
1
1東京大学医学部・第4内科
pp.1928-1929
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221955
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■診断基準(表参照)
■疾患概念と疫学
低リン血症,くる病・骨軟化症を主徴とする疾患である.腎尿細管のリン再吸収の選択的障害が本症の本態と考えられている.本症患者の多くは家族性発症を示し,X染色体性優性遺伝を示すものが多いが(X-linked hypophosphatemic rickets;XLH),わが国における集計では単発例が多く,約60%を占めている.とりわけ,成人発症の単発例の中に,主に中胚葉系の良性腫瘍を持つ例が存在し,腫瘍の摘除によりすべての病態が消失する.このような例は,腫瘍性低リン血症性骨軟化症(oncogenic hypophosphatemic osteomalacia;OHO)と呼ばれる.腫瘍自身は極めて小さいこともあり発見が困難である場合も多いことから,成人の単発例のかなりの例がこのような原因によるのではないかという可能性もある.
XLH患者では,低リン血症は生後1年以内に出現するが,歩行を始めてから骨の異常に気付かれることが多い.本症患児における主徴は,低身長,O脚などの骨変形とともにくる病の所見である.ビタミンD欠乏症や依存性と異なり,低カルシウム血症は認められず,筋力低下,テタニーも認められない.加齢によっても低リン血症,骨の変形は残存するが,骨軟化症の所見は消失し,血清アルカリフォスファターゼ値も正常化する場合が多い.
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