増刊号 診断基準とその使い方
V.内分泌
30.ビタミンD依存症I型,II型
松本 俊夫
1
1東京大学医学部・第4内科
pp.1926-1927
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221954
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■診断基準(表参照)
■疾患概念と疫学
臨床的にも検査所見上もビタミンD欠乏症と全く区別がつかないにもかかわらず,常用量のビタミンD治療に反応しない.しかしながら,薬理量のビタミンD投与に反応しすべての異常が完治する例があり,これをビタミンD依存症I型と呼ぶ.本症は常染色体性劣性遺伝を示すまれな疾患で,生後1年以内に発症する例が多い.本症患者では,血清25(OH)D濃度が正常であるにもかかわらず血清1,25(OH)2D濃度は著明に低下しており,また生理量の1,25(OH)2D3または1αOHD3の投与により,その病態はすべて正常化する.したがって,腎での1α水酸化酵素による25(OH)Dから1,25(OH)2Dへの変換が障害されていることが,本症の原因であると考えられている.
一方,同様の病態を呈しながら,薬理量のビタミンD治療にも反応しない症例が存在する.しかもこれらの例では,生理量の1,25(OH)2D3投与にも反応せず,血清1,25(OH)2D濃度は著明な高値を示す.更に,これらの例の中には大量の活性型ビタミンD製剤の投与にも反応しないものもある.このような例をビタミンD依存症II型と呼ぶ.本症患者の末梢細胞は,1,25(OH)2D3に対する反応性が欠如しており,したがって本症は1,25(OH)2Dに対する標的器官の受容機構障害によりもたらされるものと考えられている.
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