増刊号 診断基準とその使い方
III.消化管
6.胃潰瘍・十二指腸潰瘍
小林 絢三
1
,
荒川 哲男
1
1大阪市立大学医学部・第3内科
pp.1792-1794
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221897
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■「診断基準」について
胃潰瘍ならびに十二指腸潰瘍は消化性潰瘍とも称せられるが,一般的には胃液(塩酸,ペプシン)の強力な消化力が影響する部分に発生する境界明瞭な限局性組織欠損である(組織学的には粘膜筋板を越える).臨床的に潰瘍かびらんを区別することは出血を伴う場合には困難なことも多いが,一般的には,内視鏡的に白苔の付着を確認する限り,病変の大小に関係なく潰瘍とする場合が多いようである(表).
消化性潰瘍という名称が指摘するごとく,胃液の影響が及ぶところ,すなわち,食道下端部から十二指腸下部にわたって発生する.その成因として,塩酸ならびにペプシンの強力な消化力が関与することは確かであるが,これら攻撃因子に対して抵抗する側の粘膜防御因子の関与は無視できず,むしろ,現在では粘膜防御因子の減弱を第一義的に考慮すべきであるとする考え方もある.すなわち,十二指腸潰瘍はほとんどが著明な胃酸分泌亢進を示すが,胃潰瘍はむしろ正常より低い酸分泌能を示すこと,また,健常人においても十二指腸潰瘍のそれに匹敵する高酸を呈する例も決して稀でないことが,粘膜防御因子を重視する考え方を支持するものともいえる.
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