講座 図解病態のしくみ 循環器疾患・7
異型狭心症
鯵坂 隆一
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.1614-1622
発行日 1988年9月10日
Published Date 1988/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221849
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異型狭心症(variant form of angina)は,1959年,Printzmetalらにより安静時に心電図上ST上昇を示す狭心症として報告された1).発作時に心筋酸素需要の増加を伴わないことから,冠血流の一次的な減少が狭心発作の機序として推定された.その後,ST上昇を示す狭心発作時に冠動脈造影上,責任冠動脈に閉塞を認め,ニトログリセリン投与により正常化する(器質的冠動脈狭窄合併例では発作前の状態へ復する)ことが直接確かめられた.これにより,異型狭心症の病因は冠動脈スパスムにあることがほぼ明らかとなった.
その後の研究により,冠動脈スパスムは異型狭心症のみならず,異型狭心症以外の安静狭心症,安静兼労作狭心症,労作狭心症,不安定狭心症,梗塞後狭心症の病態の少なくとも一部に関与することが知られ,不整脈,急性心筋梗塞,突然死の一部も冠動脈スパスムとの関連が推定されている.本稿では,異型狭心症の他,冠攣縮性狭心症(この概念については後述する)について述べる.
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