今月の主題 カルシウム代謝と骨
カルシウム代謝異常症と骨
悪性腫瘍に伴う高力ルシウム血症
福本 誠二
1
1東京大学医学部・第4内科
pp.1522-1523
発行日 1988年9月10日
Published Date 1988/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221831
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悪性腫瘍に伴う高カルシウム(Ca)血症はその発生機序から,腫瘍細胞の骨への浸潤により骨溶解が亢進し,高Ca血症がもたらされるlocal osteolytic hypercalcemia(LOH)と,腫瘍から産生される液性因子が全身性に作用し,高Ca血症が惹起されるhumoral hypercalcemia of malignancy(HHM)の2つに大別される.多発性骨髄腫,乳癌の骨転移などによる高Ca血症がLOHの,扁平上皮癌,腎尿路系の癌に伴う高Ca血症などがHHMの代表的な例である.このうちLOHでは,骨転移巣において腫瘍細胞が直接に,あるいはparacrine factorsなどを介して間接的に,骨吸収を促進すると考えられている.一方HHMは,悪性腫瘍に伴う高Ca血症の80%以上を占める最も頻度の高いparaneoplastic syndromeであり,またこの内の大部分は共通の臨床症状を示す一つのclinical entityである.さらに近年HHMの惹起因子であるPTH様因子の構造が決定され,現在HHMの発症機序,PTH様因子の作用などが急速に解明されつつある.そこで以下本稿では,HHMの臨床的特徴について概説した後,その惹起因子としてのPTH様因子の作用につきまとめた.
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