講座 肺癌診療・1【新連載】
肺癌の臨床疫学と早期発見の問題点
江口 研二
1
1国立がんセンター・内科
pp.366-370
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221553
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
精力的な集団検診などの早期発見の努力にもかかわらず,わが国での肺癌の増加は,著しいものがある.厚生省の統計によると昭和60年の肺癌死亡数は,男性20,837人,女性7,753人で,疾患別訂正死亡率では,肺癌によるものが男性35.3,女性12.7(人口10万対)であり,いずれも胃癌による死亡の次に高い数値を示している1).しかもその年次推移を見ると,胃癌,子宮癌が低下傾向にあるのに対して,肺癌は,大腸癌や男性の肝臓癌などと共に年を追って増加傾向にあり,歯止めのかかる様子はない(図1).米国では国立がん研究所(NCI)のSEER(Surveillance Epidemiology and End Results)プログラムの報告によると,昭和59年の肺癌死亡率は男性で70.7,女性で28.8(人口10万対)となっており,年次推移をみると男性の肝臓癌,大腸癌,女性の乳癌などの訂正死亡率がプラトーになっているのに対して,肺癌は両性ともに増加している.本年度の米国癌学会(ACS)の推定癌罹患率では,男性で肺癌は前立腺癌と共に全癌の中で各々20%ずつを占めて1位であり,女性では肺癌は全癌の11%を占めて4位である.死亡者数では,男性,女性各々全癌死亡者数の36%,20%で両性とも肺癌が全癌のなかでトップを占めている2).
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.