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肺癌—その早期発見のために
坪井 栄孝
1
1国立がんセンター病院放射線科
pp.563-565
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202200
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肺癌長期生存の条件として,1)リンパ節転移が肺門部をこえない。2)癌腫が肺肋膜をこえない。3)腫瘍の血管侵襲,血行性転移を認めない。4)気管支,血管切断端に癌腫の残留を認めない。ということがあげられる。さらに5)腫瘍の組織型が扁平上皮癌であれば条件がさらによくなる。このように長期生存の条件は癌腫が小さく,肺内に完全に限局していなければならない。図1,2は国立がんセンター病院石川七郎博士の手術成績であるが,欧米の報告も5年生存率はおおよそ20〜30%である。この成績を見ると肺癌が他臓器に比していかに転移しやすいかがうかがわれるとともに,長期生存の条件を満足させるような時期に診断されることがいかに少ないかがわかる。現在,外科医は肺癌の根治性をたかめるため,放射線治療や制癌剤との合併治療を考え,かつ積極的に治療に用いている。
近年,手術成績の向上のためにこの合併治療がある役割をなしているであろうことは事実である。しかしあくまでそれは姑息的手段であつて,真に根治率をたかめるための焦点は癌が肺内にとどまつている時期に切除してしまうことでなくてはならない。
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