今月の主題 虚血性心疾患の最前線
トピックス
心筋虚血とプロスタノイド
本宮 武司
1
1東京都立広尾病院・循環器科
pp.2400-2401
発行日 1987年10月10日
Published Date 1987/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221365
- 有料閲覧
- 文献概要
心筋虚血は冠血流量の絶対的,相対的減少により発生するが,冠血流減少機構には器質的冠狭窄病変,血栓および機能的冠攣縮(スパスム)がある.冠血栓形成に血小板が重要な役割を果たしていることに疑問はないが,粥状動脈硬化の発生や冠スパスムの発生にも血小板の関与が推定され,血小板と血管壁でのプロスタノイド(prostanoids)産生のバランスの乱れが,血流のホメオスターシスの破綻に一定の役割を果たしていると考えられている.さらに最近,ロイコトリエン(leukotrien;LT)が心筋梗塞巣の拡大に関与するとの報告がされ,これらプロスタノイドやロイコトリエン産生を修飾する薬剤の虚血病態への応用も試みられている.
プロスタグランジン(prostaglandin;PG)はホルモンと異なり,体内で貯えられることはなく,各種刺激に応じて産生され,局所で活性を示し,短時間で失活する.ヒトにおける主たるPGの前駆体は不飽和脂肪酸のアラキドン酸であり,循環器系に活性の高いものとしてトロンボキサンA2(TXA2)とプロスタサイクリン(PGI2)がある.TAX2は主に血小板で産生分泌され,きわめて強力な血管収縮,血小板活性化作用を有する.一方,PGI2は血管壁で産生分泌され,TXA2に拮抗する強力な血管弛緩,血小板機能抑制作用を有する(図).
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.