今月の主題 肝硬変と肝癌
肝癌の治療
放射線療法
𠮷川 正治
1
,
高良 健司
2
,
江原 正明
3
,
大藤 正雄
3
1社会保険船橋中央病院・内科
2船橋市立医療センター・内科
3千葉大学医学部・第1内科
pp.1624-1627
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221102
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近年の画像診断の進歩により小肝細胞癌が発見されるようになった.しかし,高率に肝硬変症を合併するため,手術などの根治療法が困難であるのが現状である.これら手術困難な肝細胞癌に対し,肝動脈塞栓術(TAE)が広く行われているが,娘結節,被膜浸潤,門脈腫瘍塞栓などへの効果が不十分であることが知られている.このような現況から,新たな治療法の開発および集学的治療が検討されている.ここでは肝細胞癌の放射線療法について,筆者らの治験例(リニアックを用いた外部照射法)を中心に述べることにする.
肝臓への放射線療法は,1950年台より,主に転移性肝癌に対し行われてきた.肝臓は,比較的放射線感受性を持つ臓器とされており,Ingold1)は30Gy(10Gy/week)以上全肝に照射されると重篤な肝障害(Radiation hepatitis)を生じる危険性があると報告している.これは通常治療後2〜6週後に生じ,臨床的に肝腫大,腹水の出現,ALPの上昇などが見られる.組織学的には,肝静脈分枝の閉塞による中心静脈周囲の充血,肝細胞中の脂肪空胞の出現,肝細胞の脱落,さらに問質の線維化が生じることが知られている.肝細胞癌は,一般的に放射線感受性が低いとされており,放射線療法を肝細胞癌に応用した報告例2〜4)は少なく,その多くは進行癌を対象に,全肝照射が施行されていた(表).
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