今月の主題 止血機構とその異常
出血性疾患の臨床;病態とその診断
ビタミンK欠乏症
白幡 聡
1
,
朝倉 昭雄
1
,
中村 外士雄
1
1産業医科大学・小児科
pp.242-244
発行日 1986年2月10日
Published Date 1986/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220216
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成因と病態
新生児一次性出血症(新生児出血症)
主として生後2〜4日目の新生児にみられる出血症で,ヒトで最初に明らかにされたビタミンK欠乏症である.出血部位は,消化管と皮膚,可視粘膜が大部分を占める.随伴症状を伴わない正期産児での発現頻度は0.05〜0.5%であるが,ハイリスク新生児では5%近くに達する.とくに授乳量が不足している新生児に発症しやすい.新生児がビタミンK欠乏に陥りやすい原因として,(1)ビタミンKは胎盤移行が非常に少ない,(2)腸内細菌叢が形成途上にあり,腸内細菌由来のビタミンK2の供給が少ない,(3)乳汁中のビタミンK含量は他の食品に比べて少ない,ことを筆者らは実証した1).とくに母乳栄養児では,(1)母乳中のビタミンK含量が調整粉乳に比べて少ないこと,(2)出生後数日間の授乳量が人工栄養児に比べて少ない傾向にあることから,中等症〜重症のビタミンK欠乏性出血症が人工栄養児の15〜20倍の頻度でみられる.
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