今月の主題 胃・十二指腸潰瘍—その基礎と臨床のすべて
胃・十二指腸潰瘍の治療
難治性潰瘍に対する内視鏡的治療法—局所注射療法とレーザー療法
原田 一道
1
,
水島 和雄
1
,
並木 正義
1
Kazumichi Harada
1
,
Kazuo Mizushima
1
,
Masayoshi Namiki
1
1旭川医科大学・第3内科
pp.2746-2748
発行日 1983年12月10日
Published Date 1983/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218816
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潰瘍の局所注射療法のねらいと要点
目的 治りにくい潰瘍(いわゆる難治性潰瘍)というものは,局所的にみて,その治癒過程に歪みが生じ,潰瘍の辺縁や底部が強い線維化fibrosisをきたして硬くなり,弾力性を失っている場合が多い.このような潰瘍にいくら潰瘍治療剤を投与したところで,潰瘍は縮小しようにも縮小できない.そこでこの局所に何か薬を作用させ,fibrosisをとり除き柔らかくしてやり,そこへさらに肉芽形成を促進する薬を作用させれば良好な治癒経過をとるであろうと考えた.そこで,ファイバースコープの鉗子通路を通して局注用針(現在市販されている)で潰瘍の局所に薬を注射(注入)する方法を考案した.種々の実験的裏づけのあと臨床応用を試み,今日の局注法の要領を確立した.
方法 すなわち潰瘍の硬さ(fibrosis)をとり除く目的にステロイドホルモン(ベタメサゾン注射液)を,また肉芽の形成促進をねらって試作した0.5%のアラントイン溶液を用いるといった,ステロイド-アラントインの併用療法がその基本的方法である.もちろん,症例によってはステロイドを必要としない例もある.とくに十二指腸潰瘍はアラントインの単独療法で十分な効果が期待できるので,ステロイドは使用するまでもない.
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