臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
II.神経・筋疾患
特殊な治療法
40.重症筋無力症
高守 正治
1
Masaharu Takamori
1
1金沢大学医学部・神経内科
pp.2158-2159
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218581
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症例
27歳の女性.昭和58年2月初旬複視.同月中旬痔瘻の手術後,眼瞼下垂始まり,下旬より発語,嚥下,咀嚼障害出現して受診.入院後,頚,上肢筋易疲労も加わる.誘発筋電図(図1上)で低頻度刺激でみられるwaning現象,神経筋接合電顕像(図1下)でシナプス間隙開大,シナプス壁の減少・単純化をみとめるなど,重症筋無力症の特徴所見あり.アンチレックス試験陽性,抗アセチルコリン受容体抗体1.8pmoles/L(正常1以下).T細胞サブセットはOKT3 58.4%,OKT4 38.6%,OKT8 18.4%とサプレッサーT細胞減少を示唆,ツ反応中等度陽性.
本例は発症より経過短く若年で,急速に全身型へと進展した上,CT検査で胸腺腫を示唆する所見を得たので(図2),通常の第1選択である抗アセチルコリンエステラーゼ剤で遷延化することを避け,早期からの免疫療法,とくに胸腺摘出術の適応と考えた.3月23日,胸腺全摘手術施行(組織診:胸腺腫),術後経過不安定のため,5月8日より副賢皮質ステロイド療法を隔日,漸増法で開始した.7月中旬現在,プレドニソロン55mg隔日,休薬日の悪化は5mgの追加で対処し,抗アセチルコリンエステラーゼ剤は使用することなく良好の経過をたどっている.
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