今月の主題 臨床医のための神経内科学
診断基準
多発性硬化症
音成 龍司
1
,
柴崎 浩
1
Ryuji Neshige
1
,
Hiroshi Shibasaki
1
1佐賀医科大学・内科(神経内科部門)
pp.1284-1286
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218377
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1868年Charcotによって多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MSと略)の臨床病理像が詳細に報告されて以来,MSに関して多方面にわたる研究が行われてきた.CharcotはMSの臨床的3徴候として断続性言語,企図振戦,眼振をあげている.わが国ではそれが重視されたためか,MSの存在は長い間否定的であった.しかし1955年黒岩らによってMSの疫学調査が行われ,MSに関する知識と研究が全国に普及した.わが国におけるMSの有病率は人口10万対1〜4である.それに対し欧米では,MSは若年成人の神経疾患のなかで最も多い疾患の1つであり,有病率は30〜80である.
MSを要約すると,臨床的には主として若年成人に急激に発症し,種々の中枢神経症状が緩解と再発をくり返すことを特徴としている.病理学的には中枢神経に脱髄斑が多発し,その部分がgliosisのため硬化することを特徴としている.本症の診断は,MSに特異的な検査がまだ確立されていないので,病歴と神経学的徴候に基づいてまったく臨床的に下されなければならない.したがって本症の診断にあたっては,その診断基準がとりわけ重要な位置を占めることになる.そこで本稿では,欧米の診断基準を紹介するとともに,最近わが国で用いられている診断基準を中心に述べる.
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