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わが国における多発性硬化症(以下MSと略す)は,1960年の疫学的調査によつてその有病率が欧米に比較して著しく低いことが示され1)〜3),さらにその臨床病型も視神経,脊髄,脳幹の傷害が多い点で3)〜5),欧米例に比して特徴的と考えられてきた。しかしながら一方,1967年より典型的なMSの剖検例が報告され始め6)〜8),日本にも典型例が存在することが確認されるにおよび,臨床例の綿密な観察がなお一層要求される時代となつた。
今回の研究は,①MSに関する知識の普及に伴つて有病率が増加したか否かをみる為に,福岡市内のMS有病率を再検討して前回の成績2)と比較し,②自験臨床例について韓国例およびドイツ例とその特徴を比較し,③日本における剖検報告例の臨床的特徴を欧米例のそれと比較し,④自験例を詳細に分析して日本例の臨床的特徴を把握することをその目的とした。さらに,⑤日本例の特徴の1つである視神経病変に注目し,球後視神経炎(以下RNと略す)患者の追跡調査を行ない,MSとの関係をみた。なお本論文ではMSと視神経脊髄炎(以下NMOと略す)を合せてMS疾患群と呼ぶことにした。また発病,緩解,増悪などの用語は,Allisonの定義9)に基いて用いた。
1. Re-survey of the multiple sclerosis (MS) group in Fukuoka city disclosed the low preva-lence rate (1 per 100,000 inhabitants).
2. Comparison of the clinical cases collected in Kyushu University Hospital with those of Seoul and Würzburg disclosed a high frequency of vi-sual impairment, particularly bilateral simulta-neous impairment, at onset in the Japanese andSeoul cases. From the comparison of neurological sign, it was estimated that the optic nerves and the spinal cord might be predominantly affected in the Japanese cases.
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