診断基準とその使い方
多発性硬化症
柴崎 浩
1
1九大・脳研神経内科
pp.220-222
発行日 1975年2月10日
Published Date 1975/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205789
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多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MS)は,主に若年成人を急激に侵し,脳や脊髄,視神経などに2ヵ所以上の限局性病巣が次々と起こるために,多彩な神経症状が緩解と再発をくりかえすものである(図).神経症状がいったん完全に消失すること(完全緩解)がしばしばみられることが特徴的である.神経線維の髄鞘が一次的に破壊されるために脱髄性疾患と称され,とくにそのあと瘢痕過程としてグリオーシスが起こるために硬くなる.これが多発性硬化症の名の由来である.
MSは欧米では若年成人を侵す神経疾患の中で最も多いもののひとつであるが,わが国ではこの20年間に冲中,黒岩らによってその存在が明らかにされてきたものの,まだ一般医家には十分には認識されていない.とくに本症では特異的なテストがなく,その診断は全く上に述べたような臨床像のパターンに基づいてなされる.
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