今月の主題 呼吸不全—その実態と治療
概念
肺性心—呼吸不全の終末像
渡辺 昌平
1
,
栗山 喬之
1
Shohei Watanabe
1
,
Takayuki Kuriyama
1
1千葉大学医学部付属肺癌研究施設・内科
pp.360-361
発行日 1983年3月10日
Published Date 1983/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218170
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肺性心の概念とその変遷
肺疾患に伴って右心に変化の起こることは古くから知られており,笹本によると,William Harvey(1578〜1657)の講義録中に,広範に侵された肺結核患者では心はsucculent(汁多き)でfleshy(肥大)であると記載されているという.
肺性心cor pulmonaleは1931年P. D. Whiteが最初に提唱した名称であるといわれ,pulmonary heart diseaseとも呼ばれているが,肺の異常によってもたらされる右心機能の障害がどの程度のものを肺性心と呼ぶかについては明確でなかった.1950年代までは肺性心は肺実質の破壊的病変によってもたらされた右心の不可逆性の,治療の見込みのない変化と理解され,その診断も右心不全の出現をもってなされていた.したがって肺性心と診断された患者は予後の短かい,治療から見離された癌患者と同じように取り扱われて,血中炭酸ガス蓄積によるCO2ナルコーシスと右心不全状態で静かに生命を終えるのが通常であった.
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