今月の主題 カルシウム代謝の基礎と臨床
トピックス
癌とビタミンD
宮浦 千里
1
,
須田 立雄
1
Chisato Miyaura
1
,
Tatsuo Suda
1
1昭和大学歯学部・口腔生化学
pp.1228-1229
発行日 1982年7月10日
Published Date 1982/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217844
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ビタミンD(Vit.D)は小腸と骨を標的器官とするCa調節因子として広く知られており,その活性型代謝産物である1α,25(OH)2D3は,標的細胞のcytosolに存在するリセプター蛋白との結合を介して作用を発現すると考えられている.また,最近では小腸や骨以外の組織(皮膚,膵,副甲状腺,腎,下垂体など)にも,1α,25(OH)2D3と特異的に結合するリセプター蛋白の存在が報告され,それらの組織におけるビタミンDの作用も検討されるようになった.
とくに昨年来,数種の腫瘍細胞に同様な1α,25(OH)2D3リセプターの存在が証明され,癌細胞へのビタミンDの関与が注目されている(表)一これら腫瘍細胞への1α,25(OH)2D3の作用に興味が持たれるが,悪性黒色腫細胞では10-10〜10-8Mの1α,25(OH)2D3により増殖抑制効果が認められている1).乳癌の株細胞の増殖に対しては,濃度に依存して抑制作用と促進作用があるという報告と,濃度に依存せず常に増殖を抑制するという報告に分かれている.1α,25(OH)2D3のこれら腫瘍細胞への作用は不明な点が多いが,リセプター蛋白の存在はそれぞれの腫瘍細胞が,1α,25(OH)2D3の標的細胞である可能性を強く示唆している.
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