Japanese
English
今月の主題 カルシウム・リン・ビタミンDの再評価
話題
ビタミンDと癌
Vitamin D and cancer
溝上 哲也
1
Tetsuya MIZOUE
1
1国立国際医療研究センター国際臨床研究センター疫学予防研究部
キーワード:
大腸癌
,
ビタミンD
,
疫学研究
Keyword:
大腸癌
,
ビタミンD
,
疫学研究
pp.1013-1016
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102761
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1.はじめに
高緯度地方に癌が多いことは古くから指摘されていた.1980年,Garland兄弟1)は米国における結腸癌の死亡率が北部に高く,日射量が多い南部の都市は低いというデータにもとづいて,ビタミンDが結腸癌を予防するという仮説を提唱した.筆者2)は,日本において県を単位として分析したところ,米国での観察と同様,大腸癌を始めいくつかの癌の死亡率は,過去30年間の日射量が多い県ほど低いという相関を認めた.
1981年,Sudaら3)の研究グループはビタミンDの発癌抑制に関する実験データを発表した.マウスの骨髄性白血病細胞に活性型ビタミンDを添加すると,その細胞が分化し,増殖が抑制されたのである.その後,細胞増殖抑制やアポトーシス促進といった発癌メカニズムにおけるビタミンDの予防的役割が明らかになっていった4,5).大腸を含むいくつかの組織(臓器)では生物学的活性型である1α, 25-ジヒドロキシビタミンD〔1α, 25(OH)2D〕を局所において産生する酵素が存在し,また,そのような組織にはビタミンD受容体があり,この受容体を介して1α, 25(OH)2Dが細胞に作用する可能性がある.このような事実は,ビタミンDが大腸癌を予防するという仮説が生物学的機序からも妥当なことを示す.
ビタミンDと癌との疫学研究は大腸以外の部位,特に乳房,前立腺,膵臓についても報告されているものの,特に大腸癌において関連の一貫性を認める.本稿では,ビタミンDと大腸癌,あるいはその前癌病変である大腸腺腫との関連を調べた疫学研究を概説する.
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