今月の主題 最近の腎疾患の基礎と臨床
腎疾患の病態
尿細管障害―尿細管透過性の面から
藤本 守
1
,
内藤 和世
1
Mamoru FUJIMOTO
1
,
Kazuyo NAITO
1
1大阪医科大学・生理学
pp.494-496
発行日 1980年4月10日
Published Date 1980/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216470
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尿細管の透過性
尿細管の膜透過現象は細胞膜を通る物質の経細胞的輸送と,細胞同志の継目を通る労細胞的輸送の両者からなる.前者はさらに管腔膜と側基底膜の透過現象が組合わされており,後者は管腔膜に近いタイト結合の透過性と,それにつづく細胞間隙の通りやすさが問題となる.上皮組織として腎尿細管をながめると,近位部は小腸粘膜や胆嚢などと同様に,漏洩性上皮(leaky epithelium)に属し,Na+などの輸送を積極的に行っているが,強い濃度勾配を作りえず,Na+とともに水を等張性に輸送している.これに対して遠位尿細管は蛙皮やガマ膀胱膜などと同様に,タイト上皮(tight epithelium)に属し,能動的に輸送されるNa+のみならず,受動的に運ばれるイオンや水もほとんど細胞膜を通る結果,その相対的な通過速度の違いによって,全体として非等張性の液の輸送が起こっている.
腎尿細管では,大量の血漿濾液の成分が再吸収される一方,一部の尿成分は直接細胞によって分泌をうけることはひろく知られている.各種の成分が上皮組織のどこをどのように通るかは物質の種類により,また尿細管の部位によって異なる.たとえば,Na+やブドウ糖やアミノ酸は,近位部ではもっぱら経細胞的に再吸収され,しかもそれらの有機溶質は大部分が近位尿細管の前半で再吸収されてしまう.ところがCl-はそのかなりの部分が旁細胞的にも再吸収される.
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