臨時増刊特集 これだけは知っておきたい治療のポイント 第2集
XI.腎疾患
1.腎炎薬物治療の問題点
腎炎の抗凝固療法の適応と限界
東條 静夫
1
1筑波大内科
pp.2256-2257
発行日 1978年12月5日
Published Date 1978/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208326
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はじめに
諸種の腎疾患において,その発生ならびに進展機序に免疫学的過程の有無にかかわらず,糸球体内血液凝固機転が密接に関連していることは,実験的および臨床の諸病態より実証されている.
糸球体腎炎は,衆知のごとく免疫学的機序により発症するが,その発症過程において,血液凝固,線溶系が,補体活性系,カリクレイン-キニン系,白血球遊走などのmediatorsとともに糸球体障害を惹起するのに不可欠なものとされ,さらに進展過程においても,血液凝固線溶系が主要な役割を演ずることは,尿中FDP,プラスミンが血中フィブリノーゲンなどとともに,その活動性,進行性の指標となると考えられている.その他の腎障害,たとえば急性腎不全(腎皮質壊死),溶血性尿毒症症候群でも,血液凝固線溶系が病変の発生に中心的役割を演ずるとされ,さらに膠原病性腎障害,悪性高血圧症,晩期妊娠中毒症,糖尿病性糸球体硬化症,腎移植の拒絶反応などにも強い関連がみられるといわれている.かかる趨勢下に,上記諸種腎疾患に抗凝固療法が試みられている.ここにヘパリンを主体とする抗凝固療法と,血小板凝集阻止剤による療法につき概説する.
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