今月の主題 免疫診断法と免疫療法
基礎知識
免疫監視機構と老化・発癌
岸本 進
1
,
黒木 政秀
1
1熊本大第2内科
pp.769-773
発行日 1978年6月10日
Published Date 1978/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207891
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免疫監視機構
免疫監視機構とは
腫瘍の発生,転移,退縮,再発には,生体の免疫機能がなんらかの影響を及ぼしていると考えられている.Ehrlich(1908)は,生体の免疫機能が腫瘍発生を防いでおり,老人のごとく免疫機能が低下した場合に腫瘍が発生し増殖するという考えを提唱し,もしこのような免疫機能が存在しなければ,発癌の頻度はきわめて高いものになるだろうと述べている.
その後,純系動物の実験使用が可能となって,この腫瘍免疫が動物レベルで証明されてきた.Forey(1953)は,純系マウスでmethylcholanthrene(MCA)誘発腫瘍を皮下に移植し,腫瘍が発育したあと腫瘍を結紮し,血行を遮断したマウスに再び自家腫瘍を移植したところ,これらのマウスが腫瘍を拒絶することを認め腫瘍免疫が成立することを証明した.これに続いてPrehn(1975),G. Klein(1960)らが同じくMCA誘発腫瘍でマウスに腫瘍免疫が成立することを証明し,腫瘍細胞に腫瘍特異の移植抗原が存在すると考えた.G. Kleinは,これを腫瘍特異移植抗原(tumor specific transplantation antigen;TSTA)と呼んだ.
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