今月の主題 消化器癌のトピックス
肝癌
早期診断と予後
河野 信博
1
,
菅原 克彦
1
1東大第1外科
pp.198-199
発行日 1977年2月10日
Published Date 1977/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207065
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昭和50年度のわが国の死亡統計1)によると,肝臓の悪性新生物による死亡数は10,583例を数え,この年の死亡総数の1.5%を占める.これは胃の悪性新生物による死亡が49,850例(7.1%)であるのに比し,決して少ない数字ではない.また,これらを悪性新生物による死亡総数に対する比率でみても,それぞれ7.8%および36.6%を占める.一方,これの1962〜1971年までの剖検集報での集計では,肝癌は悪性腫瘍による死亡例88,777例中5,452例(6.14%)を占め,さらに同じ期間における東大病理学教室剖検例中の悪性腫瘍総数2,155例に対して,肝癌は127例(5.89%)を占めている2).これらの数字で表されているように,肝の悪性腫瘍の頻度は全悪性腫瘍の5〜8%を占め,意外に高い.
しかしながら,これを外科臨床の立場からみると,この13年間に東大第1外科で原発性肝癌と診断された症例は43例にすぎず,同じ期間の胃癌症例1,398例と比較すると,いかに肝癌の症例が外科治療の対象となっていないかがわかる.肝癌の患者も胃癌の患者と同様に,初診時には内科医を訪れることが多いが,切除の可能性ありとして外科へ廻される症例がいかに限られているかを如実に示してもいる.肝癌の早期診断を強調しなければならない理由もこの辺にあるように思われる.
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