オピニオン DSM-5—私はこう思う
精神病理学の立場から
加藤 敏
1
1小山富士見台病院
pp.604-606
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204962
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DSM-5の編集指針として,①日々の臨床に役立つ診断分類体系,②医学の一分科としての精神科,③神経内科とのつながり,④歴史的背景を持つ用語を廃止して,各疾患群をうまく記述できる用語に置き換える,⑤精神科という特殊性を代表している「臨床的関与の対象となることのある他の状態」の大幅な拡大の5つの項目が挙げられている。
臨床的有用性という点でいうと,精神医学の伝統の中で提出された「歴史的背景を持つ用語」を廃止し,「神経内科とのつながり」を重視するという指針によく示されているように,全体として神経内科医をはじめとした一般の臨床医にも分かりやすいような形で「毎日の臨床に役立つ診断分類体系」を作成する努力がなされ,その分,精神科医としての専門性への配慮がかなりの部分減らされたという印象を禁じ得ない。事実DSM-5では,精神科医としては実践の現場ではきわめて有用性がある臨床単位や分類がかなりの数姿を消した。残念なことである。
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