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今月の主題 胃癌範囲診断における拡大観察のピットフォール
主題症例へのコメント
病理の立場から
Editor's Comments to the Case Reports from Pathological Point of View
九嶋 亮治
1
Ryoji Kushima
1
1滋賀医科大学臨床検査医学講座(附属病院病理診断科)
pp.351-352
発行日 2015年3月25日
Published Date 2015/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403200177
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はじめに
われわれ病理医は,胃の生検や切除検体で非腫瘍と腫瘍を鑑別する際,病理組織学的に異型性を示すところ(つまり正常像とは“隔たり”があり“違和感”を感じるところ)が“領域性”を示すかどうかを観察している.そしてその“領域”の辺縁(つまり非腫瘍部との境界)を“フロント(前線,戦線)”と呼んでいる.内視鏡医も,通常内視鏡検査において,色調を含む粘膜の構造異常が領域性を示すかどうかを観察しているはずである.拡大内視鏡観察では病理組織学的要素が加味され,粘膜表層部の血管像と上皮の構築の異常をみることで病変の領域性やフロントが認識される.拡大内視鏡観察を持ってしても範囲診断を見誤るということは,そういった領域性とフロントが認識しにくいということであり,そのような症例は病理診断も難しい可能性がある.
今回,ESD(endoscopic submucosal dissection)で断端陽性という残念な結果になった分化型癌と未分化型癌の大変貴重な2例が提示された.日常,内視鏡所見と対比しながら胃癌の病理組織を診断している病理医の立場から,主題症例に関することを述べてみたい.
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