診断基準とその使い方
自己免疫性溶血性貧血
恒松 徳五郎
1
1京大第2内科
pp.1410-1413
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206789
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
日常診療において貧血症はしばしば遭遇する症候である.貧血は骨髄での赤血球産生と末梢組織での破壊,喪失とのバランスが崩れる状態で,後者が前者を大きく上回ったときに現れる.溶血性貧血は体内での赤血球破壊が著明に亢進し,骨髄造血能(代償的亢進)で補いきれないとき発現する病態である.溶血の存在を知るにはまず貧血の発現または進行が急速である点に注目すべきである.この点は赤血球産生低下による場合,すなわち低形成または無形成骨髄による貧血と異なる.骨髄での造血が全く停止したとしても,その結果として貧血が発現するにはかなりの日数がかかるのと対照的である.溶血性貧血はかかる状態で急速に発症する例が多いが,慢性の経過をとるものでは貧血の発現は緩徐である.かかる例も存在する.溶血性貧血では破壊された赤血球が体内で処理されるという点で,体外への出血と異なる症候や検査所見を呈する.黄疸,ことに間接ビリルビンの上昇,尿,糞便中へのウロビリノーゲンの排泄増加などがそれを示す所見である.
溶血性貧血の原因には種々のものがあるが,そのうち自己免疫機序によるもの,すなわち自己免疫性溶血性貧血の診断基準について述べる.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.