臨時増刊特集 診断基準とその使い方
IX.血液・造血器疾患
自己免疫性溶血性貧血
恒松 徳五郎
1
,
神奈木 玲児
2
1京大・第2内科
2京大・内科
pp.2096-2101
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207607
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溶血性貧血の診断基準
厚生省特定疾患・溶血性貧血調査研究斑で作成された溶血性貧血診断の手引きを表1に示す1).溶血性貧血は,赤血球寿命の短縮に基づく症状を主徴とする疾患である.したがって,この基準でⅢの1)にはじめてとりあげられている赤血球寿命の短縮は,実は溶血性貧血の診断にとってきわめて重要な意味をもつ所見であるが,いずれの施設でも実施しうるとは限らないので,その適用は限定されている.
そこで,この基準では間接ビリルビン増加,網赤血球増加,貧血の存在の3つを主要所見に定めている.この点を説明しよう.体外への出血によって起こる出血性貧血とは異なり,赤血球の崩壊が体内で起こり,そして体内で処理されるために黄疸,過ビリルビン血症,尿中ウロビリノーゲン排泄の増加などが起こる.この診断基準では,主要所見として間接ビリルビンの増加をとりあげている.次に骨髄での赤血球産生の低下による貧血症とは異なり,造血はむしろ亢進しているのが普通で,この点が網赤血球の増加という所見として捉えられる.赤血球の崩壊と造血の亢進のバランスが大きく崩れた時,第3項目である貧血があらわれる.この基準では男子で12.5g/dl,女子で11.5g/dlという数値を定めているが,一般には溶血性貧血における貧血はかなり重症で,しかも急激に進行するものが多く,この基準を大きく下回る症例が多い.しかし,代謝性造血が十分に亢進しておれば,赤血球の崩壊が起こっていても貧血が出現しないことも可能である.
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