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血小板数は正常,出血時間は延長,血小板粘着は低下
皮膚・粘膜の出血を主徴とした症例であり,凝血検査では血小板因子系の検査として血小板数は正常であるが,毛細血管抵抗試験は陽性でその減弱がみられ,出血時間は著しく延長しているが,血餅収縮は正常である.またガラスビーズ管法による血小板粘着能(停滞率)は低下している.血小板凝集能は,その誘発物質であるADP,コラーゲン,エピネフィリンなどを添加して血小板凝集計にて観察すると正常の凝集曲線が得られるが,リストセチンristocetin(終濃度1.0mg/ml)を添加した場合にのみ凝集能の低下がみられている.また,同様に血小板多血漿にリストセチンを添加し試験管内でみると正常者では白濁し,これを吹雪(snowstorm)のように,と表現されているが,von Willebrand病では吹雪の状態がみられない(図1).その他,血小板形態には異常がなく,トロンボプラスチン生成試験(TGT)による血小板第3因子能および血小板availability testによる血小板第3因子の放出反応などには異常を認めなかった.
血漿凝画因子系の検査としてプロトロンビン時間(PT)は正常であるが,部分トロンボプラスチン時間(PTT)は明らかに延長している.したがって内因系に関与する凝血因子として第VIII因子,策IX因子および接触因子(第XII,第XI因子)などのうち,いずれかの因子に異常があるものと推定される.次にトロンボプラスチン生成試験(TGT)では,BaSO4吸着血漿に凝固時間の延長がみられるので,第VIII因子または第V因子の欠乏か異常が考えられる.なおPTが正常であることから,第VIII因子の欠乏か異常が推定されるので第VIII因子濃度を定量すると,15%と軽度ながら減少しているのが認められた.その他トロンビン時間は正常であるので,フィブリノゲン濃度には変化がなく,抗トロンビンも存在しないものと考えられる.線溶系の検査ではLysine-Sepharoseによるプラスミノゲンフリーフィブリン平板法にて活性プラスミンの存在はみられなかった.
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