図解病態のしくみ 炎症のしくみ・1
炎症の定義と臨床症状
水島 裕
1
1東大・物療内科
pp.1566-1567
発行日 1975年9月10日
Published Date 1975/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206234
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炎症とは 臨床医学において,また病理学をはじめとする基礎医学において,炎症ということばは実によく使われていて,炎症を除いては疾病論は成立しないといっても過言ではない.しかし,具体的に炎症とは何かというと,あまり的確な説明はない.臨床的,古典的には,熱感,発赤,腫脹,疼痛の4大徴候(図1)が炎症の特徴であり,組織学的には充血,血管透過性亢進,細胞浸潤などで特徴づけられる.
一口にいって,炎症とは生体に有害な刺激に対する組織レベルでの防御反応と解釈されている.すなわち,炎症なしには,生体に有害な細菌などに対して生体は十分抵抗することができない.この理論は図2に示した原因のうち,特に病原体感染,そして物理的・化学的刺激,外傷などにもあてはまるものであるが,いわゆるアレルギー性炎といわれているものに対しては,通用しない.動物にみられるアルサス反応や,膠原病をはじめとする,いわゆる自己免疫疾患の場合には,炎症の原因となるものよりも,炎症そのものが,生体にとって,より大きな負担となっていることは,まず間違いない.このように,炎症を,有害な刺激に対する防御反応とも定義できず,結局,古くからいわれているように,炎症とは刺激に対して起こった組織の反応であり,刺激がとり除かれ,治癒に向かうか,あるいは悪化,再然をくり返すかは別として,その全経過をさすという以外にないと思われる.なお,当然のことながら,刺激に対して起こった反応でも,上記の臨床的・組織学的特徴に合わないものは,炎症とはいわない.
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