臨床病理医はこう読む
血液凝固検査(4)
藤巻 道男
1
1東医大臨床病理
pp.1714-1715
発行日 1975年10月10日
Published Date 1975/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206274
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トロンビン時間の延長
出血症状はほとんどないが,打撲により紫斑を生じやすく,手術などでは止血しにくい症例である.血小板数と機能は正常であるが,PTTおよびプロトロンビン時間の延長がみられる.またトロンビン時間の延長とトロンビン作用を示す蛇毒であるレプチラーゼ時間は著しく延長している.したがってフィブリノゲンを中心とした異常が考えられる.トロンビン時間に影響を及ぼす因子には,フィブリノゲンの濃度と質的な異常,抗トロンビン(ヘパリンの増加,抗トロンビンIIの増加,FDPの抗トロンビンVIの産生など),フィブリン重合阻止作用(異常タンパクの出現,FDPの重合阻止因子Iの産生)などによる場合が考えられる.
フィブリノゲン濃度はトロンビンを添加しての凝血法では減少を示しているが,非酵素反応による方法として56℃に3〜5分間の加熱法では正常値であり,またCohn分画I(3%アルコール),20%硫安飽和などによる沈殿法でも正常値を示している.また感作赤血球凝集反応法(HIT),ラテック凝集法,一次元免疫拡散法などによる免疫学的測定法にて正常値を示している.このように,トロンビン凝固性のフィブリノゲンは低値であるが,トロンビン以外の非酵素反応の測定によるフィブリノゲン濃度は正常値を示している.
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