今月の主題 心身症からみた症候群
診断
心身症を確かめるには
小此木 啓吾
1
1慶大精神神経科
pp.268-270
発行日 1975年3月10日
Published Date 1975/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205805
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心身症の診断とは
[心身症の診断」を云々するには,次のような特殊性をまず強調せねばならない.
「心身症」は疾患単位(nosographical entity)ではない「疑診—確診(原因診断)—原因治療」という枠組の中で事が運べばよいが,「心身症」は本来そのような枠組に合致する特定の疾患を意味してはいない.むしろそれは,「身体症状を主とするが,その診断や治療に,心理的因子についての配慮がとくに重要な意味をもつ病態」であって,「心身症はそれ自体独立した疾患単位を構成するものではなく,臨床各科にわたる諸疾患の症例の中で,ここで主張されたような条件にあてはまるものを意味している」のである(日本精神身体医学会,「心身症の治療指針」,1970,参照),たとえば,本号の「心身症からみた症候群」の中に列記されている消化性潰瘍や高血圧を1つとりあげてみても,それらの疾患にかかっている患者の中で,「診断や治療に心理的因子についての配慮がとくに重要な意味をもつ」と判断される症例が「心身症」と呼ばれるのである.換言すれば,「心身症の診断」とは,このような判断を,それぞれの主治医がその患者との医師・患者関係の中で下すに至る実践的な営みをいうのである.さらにこのような「狭義の心身症」の定義に加えて,より「広義の心身症」の定義,「身体的原因によって発生した疾患でも,その経過に心理的な因子が重要な役割を演じている症例」をも含むことになると,「心身症の診断」の実用主義的な色彩はますます色濃くなっていく.
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