特集 病気とはなにか
随筆
病気と私
生命を確かめつつ生きた青春
尾崎 秀樹
pp.28-29
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914227
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私は昭和24年から30年まで,足かけ7年の間,闘病生活を送った。まだ20歳をわずかに出たばかりで,夢多い日々を病床にくぎづけにされることは苦痛だった。しかし死をみつめるこの期間が,私の青春時代にあったことをけっして悔いてはいない。むしろその7年間を私は私の精神史の上で,この上もない季節だったと思っている。
20代の青春は実り多いものだ。たとえ病床にあったとしても,それをどう生きたかによって健康人以上に意義のある人生をすごすごとが可能だ。
私の闘病歴は,まず混性の肋膜炎からはじまった。1年後に右の肺尖に影があらわれ,病状は急速に進んだ。まだ結核に対する特効薬が普及しないころで,ティービオンを試験的に服用し,気胸に通院する生活がしばらく続いた。しかし肋膜の肥厚が激しく,次第に気胸の効果はうすれ,やがて左下葉に浸潤がひろがった。ストマイはまだ保険の適用をうけない段階で,もっぱらパスを服用したが,下着を黄色く染めるだけで,病状を安定させることはできなかった。
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