提言
自由を確かめるために
田中 順子
1
Junko Tanaka
1
1イムズミュージック
pp.1042-1043
発行日 2024年10月15日
Published Date 2024/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203952
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“イムズミュージック”(以下,イムズ)という音楽のワークショップを,倉敷市内の教会で毎月開催して今年で7年目となる.イムズは作業療法とはまったく関係がない.活動内容を決め司会進行するのはミュージシャンで,私は作業療法士としてではなく世話人として全体に目を配ったり,参加者が参加しやすいようにサポートをしたりしている.そこに集う人たちは,主婦,教師,ミュージシャン,会社員,牧師等さまざまで,特に悩みもなく病気もない人から,発達障害傾向のある人や心を病んで治療中の人まで,これまたさまざまである.イムズの目的は,音楽を楽しむ,仲間づくり等であり,取り分け変わったものではない.しかし,そこで使用する音楽はちょっと変わっている.
療法的な音楽活動では,皆がよく知っている「なじみのある」音楽を使うのが一般的である.そういった音楽はメロディー,リズム,拍子等の決まり事があり,それに従って演奏する必要がある.しかし,イムズの音楽の基本は主には即興である.だがジャズの即興とは違って基になる型はない.感性に従って思いつくまま自由に音を出すというものである.たとえば指1本だけでポンポンとピアノを叩いたり,太鼓は叩くだけでなく手のひらでこすったり指先ではじいたり,朗読・影絵・ダンス・声・楽器を総動員して即興パフォーマンスしたり…….楽譜といっても音符を使用しない図形楽譜や映像楽譜だったり,楽器も民族楽器,ペットボトル,瓶,缶,紙だったりする.時には壁や床,机,エアコンの吹き出し口さえも楽器になる.いうなれば,イムズは変わったことをする場なのである.
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