病気のはなし
多発性硬化症
原 英夫
1
1九州労災病院神経内科
pp.966-970
発行日 1999年7月1日
Published Date 1999/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903923
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新しい知見
わが国での多発性硬化症(MS)の頻度は欧米に比べ低く,臨床的にも視神経と脊髄の障害が強い例が多いことが特徴である.吉良ら1)は,日本人のMSを,視神経と脊髄に主病変が限られるアジア型(視神経脊髄型)MSと,それ以外の中枢神経系に多巣性に病変を有する西洋型MSに分け,両者の臨床的,免疫遺伝学的特徴を検索した.特に,HLA-A,B,G,DR,DQ,DP抗原遣伝子の各アリルの抗原頻度を上記の2つの型について調べたところ,アジア型MSは,HLA-DPB1*0501と有意に相関し,一方,西洋型MSはコーカシア系白人のMSと同様に,HLA-DRB1*1501と有意に相関していることを報告している.
MSの原因としては,自己反応性のT細胞,特に髄鞘の構成蛋白を認識する自己反応性T細胞が髄鞘を破壊し,脱髄を引き起こしていると考えられている.山村ら2)は,NK細胞がこの自己反応性T細胞に対し調節的に作用し,MSの発症に抑制的に働く可能性を報告している.
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