今月の主題 神経内科の動き
見逃しやすい神経病
慢性硬膜下血腫
中村 紀夫
1
1慈恵医大脳神経外科
pp.1390-1391
発行日 1974年11月10日
Published Date 1974/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205644
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
かつて慢性硬膜下血腫は病理学者と脳神経外科医との間で大きな論争をまきおこした.そしてその流れは今日まで綿々として続いている.その華華しい議論が展開された時点においては,本疾患は臨床家がchronisch progrediente Subduralhämatomと表現したように,慢性進行性に増悪する臨床経過に注目され,それはいわばなんらかの脳腫瘍を思わせた.したがって,脳腫瘍の疑いで脳神経外科医のもとに送られ,結果的に本疾患と診断されたので,その限りにおいて見逃されなかった.しかしながら,その後本疾患の経過が必ずしも慢性進行性ではないこと,臨床症候も一定せず慢性頭蓋内圧亢進とは限らないことから,むしろ脳卒中と似ていて誤診されたり見逃されたりすることが唱えられ,鑑別診断上問題にされるようになった.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.