今月の主題 腎疾患のトピックス
腎炎の成り立ち
血液凝固の立場から
風間 睦美
1
1帝京大第1内科
pp.1128-1129
発行日 1974年9月10日
Published Date 1974/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205560
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はじめに
腎炎の成り立ちに血液凝固が関与していることは,完成した腎炎組織の糸球体を中心としてしばしばフィブリン沈着が認められることからも明らかである.さらに実験的にトロンボプラスチンやLiquoidという物質を動物に静注すると,組織学的にも糸球体腎炎ときわめて類似した腎障害を作ることが可能であり,またかかる実験動物あるいは実際の腎炎患者に対してヘパリンやワーファリンの如き抗凝血薬,あるいはジピリダモールの如き血小板凝集能抑制剤を投与すると腎障害を阻止し得ることから,腎炎の成り立ちに凝固機能がより積極的な役割を果たしていることが考えられる.
腎炎の発現には現在免疫学的機序が考えられているが,その成り立ちを凝血学的にみるならば,問題点は腎糸球体を発現の場とする抗原抗体反応に際し血液凝固が如何に触発されるかということと,いったん形成された血栓が腎組織内でどのように成長し,かつ処理されるかという2点に要約されよう.ここでは腎炎の糸球体に形成される微小血栓形成の過程を,止血機序の要因,すなわち血管壁,血小板および凝固と線溶能の3者の共働作用として考えてみたい(図参照).
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