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診 断
妊娠時には暑がり,神経質,動悸などの自覚症状や,頻脈,皮膚の高温・多湿などの他覚所見のほか,しばしば軽度の甲状腺腫を伴い,検査上でも基礎代謝率(BMR)は増加(最終月には+20〜30%)し,蛋白結合ヨード(PBI)および血清サイロキシン(T4)は,それぞれ7.0〜12.0μg/100m9(非妊時4.0〜8.0μg/100 ml1))および14.9〜19.2μg/100ml2)(非妊時6.2〜14.5μg/100ml3))(Tetrasorb)と比較的高値を示すため,軽症甲状腺機能亢進症とまぎらわしい場合が少なくない.しかし,Resin Triiodothyronine(T3)uptake(RT3U)は,正常妊娠時にはMitchell法(Triosorb,Triluteなど)で低値,Scholer法(Res-O-mat T3,Thyopac-3,Triakitなど)で高値を示すが,甲状腺機能亢進症を合併する場合には,低値(または高値)を示さない点で,両者の鑑別に有用である.すなわち,Triosorb値は妊娠10週には25%以下となり,14週以後はほぼ21%を続ける4)(正常域25.4〜37.3%5))が,甲状腺機能亢進症を合併する場合には,機能亢進域にあるかまたは正常域にある.したがって,RT3U値が10週以後において,機能低下症域に入らない場合には,切迫流産が除外できれば,甲状腺機能亢進症が疑われる.Free Thyroxine(F-T4)は妊娠合併の有無にかかわらず,甲状腺機能状態をよく反映するので両者の鑑別上有用であるが,その測定の技術的困難性のために実用的でない。しかし,T4濃度とRT3U値との積,すなわち,Free Thyroxine Index(FTI)がF-T4と平行するところから,最近では,このFTI(Res-O-mat ETRもその1つ)が上述の目的のために使用される.
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