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再発性胃・十二指腸潰瘍の特徴
胃・十二指腸潰瘍は,本来病変の性質として再発・再燃を繰り返しやすく,したがって,慢性経過をたどる例が多いとされているが,教室のさきにまとめた成績1)では63%にもおよんで認あられた.その再発の予知ならびに予防についてはこれを適確にとらえる方法を見いだすことが困難であり,一応は定期的な検査によって経過を観察することが現状では最良であるとされている2).しかし,なお本症の初発時においてその経過.予後を見とおす上に何らかの手がかりが得られはせぬかと考え,教室においては潰瘍例の多面的な要因分析を行なって,いわば予後に対する予測的診断criteriaの確立を意図している.なお結論的な段階にはいたっていないが,身体上の条件の上では年齢と胃粘膜萎縮度・胃酸分泌能との間の解離的な現象,つまり若年にもかかわらず胃粘膜の萎縮性変化が強く,酸分泌能も低下が著明な例や,高年齢においても胃粘膜の萎縮性変化を伴わず,酸分泌能が高い例においては潰瘍の再発頻度が高い傾向を認めた3).目を再発局所に向けて検討すると,瘢痕治癒化を確実に見届けたさいには,その同一部位に潰瘍が生ずることはむしろ少なく,したがって,瘢痕組織周辺に潰瘍成立を容易にする要因は必ずしも考えることはできない.初発潰瘍同様に,Shay4)の酸・ペプシンを中心とした攻撃因子と,粘膜抵抗性.血流動態などの防御因子とのアンバランスによって,内分泌性あるいは精神神経性機能の異常等を背景として潰瘍がひき起こされるものと考えられる.その誘因となる精神緊張や不安,あるいは情動ストレスの影響については諸家の説くところであり,動物実験上も実証されているが,とくに胃潰瘍の慢性.再発例と初発例についてManifest Anxiety Scale(MAS・Taylor-杉山法)やMPI等の上で調査を進めると,ほぼ年齢・性等の上で等質性の吟味された対象において,初発例のMAS平均は19.5(10〜27)であるが,再発例においては22.5(10.5〜40)と高値を示した.これを酸分泌能との間に対比すると図のごとく対照域をはみ出して不安得点の高い例が多くみられるが,それらの酸分泌能は必ずしも高くない.しかし,全体としてはMASと酸度には平行関係がうかがわれ,かつメコリール反応型をみると再発例にはP型が多いと同時に,P型例にはMAS得点も高い傾向をうかがうことができる.このような相互関係は十二指腸潰瘍のさいにはさらに顕著となる5,6).
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