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消化性潰瘍の食事療法については従来より多くの意見が提唱されているが,これは大きく以下の2つにわけられるようである.1っはCruveilhier,Leubeらによって提唱された庇護制限食事療法であり,わが国においては南,善光寺が本邦向きに改良している.これは消化性潰瘍の特異性を考慮し,食事療法の目的は栄養補給という面よりも,病変局所に対する機械的刺激が出血その他を促し治癒を遷延させるという考えからつくられたものである.他方はLehnhartz,Meulengrachtの積極的栄養補給食事療法であり,山川,黒川,山形,松永らにより改良が加えられている.この方法はMeulengrachtより積極的ではないが,従来の庇護療法より早期に高カロリーの栄養補給を行なおうとするものであろう.最近の消化性潰瘍の治療は,抗コリン剤,抗ペプシン剤,抗ガストリン製剤など多くの種類の薬剤が開発されているが,治癒期間,治癒率などは従来の薬剤よりすぐれているとはいいきれず,入院安静療法とともに食事療法の占める割合は大きいと考えられ,とくに急性期においてはその感が強い.筆者は胃X線内視鏡検査があまり発達していなかった時代に用いられた食事療法,すなわち潰瘍の出血,あるいは胃粘膜に対する機械的刺激,胃十二指腸の運動亢進を抑制する点を考慮した庇護療法をそのまま用いてはいないが,一方Meulengrachtらが始めた大量の出血直後より多量の高カロリー食を投与することは行なっていない.一般に出血直後の患者は食欲もなく,一般状態もまた精神的にも不安な状態で,流動食でも嘔気などとともに再出血をみることがあるからであり,出血直後には絶食期間をもうけ,その後はできるだけ早期に高カロリー食を投与するようにしている.
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