今月の主題 内科最近の話題
感染症
難治感染症宿主の要因
藤井 良知
1
1帝京大・小児科
pp.436-437
発行日 1973年4月10日
Published Date 1973/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204679
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はじめに
患者の側からいえば癒り難い感染症であり,一方治療する側からは癒し難い感染症ということになるが,いずれにしろその内容は時代とともに移り変わってきた.抗生物質療法時代以前には致命的感染症はきわめて多数で,今日想像もできない情勢にあったことは,厚生者の衛生統副を昭和前半に遡ればよく解ることである.しかし抗生物質時代に入ると,いかに致命的と考えられた細菌感染症でも,適切な抗生剤で治療される限り容易に救われるようになった.
もちろん,予防医学,化学療法以外の治療医学の発達を無視することはできないが,化学療法が最大の効果を発揮したことはいうまでもない.感染症の質的・量的変化が,その軽症化と滅少の傾向を示しているなかで,抗生物質の種類は止まるところなく増加し,その消費量も年々激増の一途をたどるこの20年間の歴史をふり返ると反省すべき点が多いが,難治感染症については数的の増加ではなく,もっぱら質的の変化が大きいのである.
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