日本人の病気
肺癌
金上 晴夫
1
1国立がんセンター
pp.1360-1361
発行日 1971年8月10日
Published Date 1971/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203801
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肺癌の増加
肺癌は世界的に増加の傾向を示し,アメリカでは1930年の肺癌死亡者2500名に対し,1967年には5万名と37年間に20倍の増加を示した.わが国でも平山の報告によれば,昭和25年の男子肺癌死亡数789名に対し,43年には6657名,女子死亡者330名から2694名といずれも約8倍の増加を示している.死亡率も,男子では昭和25年の1.9から43年には13.5,女子でも0.8から5.2と急激な増加を示している(表1).
これを結核の死亡率と対比してみると,大正8年,240と最高値を示した結核の死亡率も,化学療法,集団検診,BCGの接種などにより昭和43年には16.8と激減しているが,この死亡率は昭和43年の男子肺癌死亡率13.5とほぼ等しく,肺癌が肺結核にとってかわりつつあることを示している,しかも表2に示すように,55歳以上の男子についてその死亡率をみると,昭和40年では,55-59歳が32.0,60-64歳で66.3,65-69歳で93.1,70-74歳で118.5と結核全盛時の死亡率に迫りつつあるので,肺癌は今日そして将来,慢性閉塞性肺疾患と共に日本においても最も重要な呼吸器疾患となろう.
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