病気のはなし
肺癌
池 修
1
,
人見 滋樹
1
1京都大学結核胸部疾患研究所胸部外科学
pp.874-879
発行日 1987年7月1日
Published Date 1987/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204196
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
疫学
わが国において,死因の第1位は悪性新生物によるものであり,しかも年々増加している.また,悪性新生物の中で,胃癌や子宮癌が減少傾向にあるのに対し肺癌は著明に増加し,男子では胃癌に次いで2位,女子では胃癌,結腸癌および直腸癌に次ぐ3位の死亡数となっている.西暦2000年には,悪性新生物による死亡の第1位は肺癌になると考えられている.
このような肺癌の急速な増加の原因として,大気汚染,喫煙,人口の高齢化,診断法の進歩などが考えられる.特に喫煙者では発生率が高く,1日10〜20本で非喫煙者の8倍,20本以上では18倍の発生率との報告もある.また,タバコ煙の中には10種類以上の発癌物質が含まれており,扁平上皮癌や小細胞癌が発生しやすくなるといわれている.一方,職業と関連して肺癌発生率の高いものに,放射性物質による被爆,石綿,ニッケル,クローム,マスタードガスによるものが知られている.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.