読後随想
—氾濫する家庭の医学—坪井 忠二著:力学物語(岩波書店)
長洲 光太郎
1
1関東逓信病院外科部
pp.376-377
発行日 1971年3月10日
Published Date 1971/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203555
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連載するにあたって
GOT,RNA,ACTH,DM,SMON,あるいはNASA,IC,EEC,PENクラブ……まだまだいくらでもこういう略語をならべることができる.IIc+IIIが胃癌のあるタイプを表現する.USOについては拙著「むし歯のライオン」で触れたことがある.UFOは空飛ぶ円盤のことであった.
これら略語はその成り立ち,いわばフルネームを知っていなければ役にたたない.逆に言えば役にたつという条件のもとにイニシァルをならべた略語の意味がある.こういうことは略語で一番手っとり早く理解されるだろう.しかし何もこのような極端な例だけが特別だというわけではない.あらゆる言葉もやはりこの略語と同じように,意味という内容を相互に理解しあえる場合にのみ,役にたつのであって,表現手段としての言葉と,表現される意味という中味とは2つにして2にあらずという関係にある.手段がなければ中味もないし,中味がなければ手段もまた存在しない.
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