診断のポイント
痛風
佐々木 智也
1
1東大物療内科
pp.211-213
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200268
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
痛風は正しく診断されているか
日本人の食生活は戦後急激に変化し,獣,鳥,魚肉,鶏卵,牛乳およびその二次製品など動物性食品の摂取食物中に占める割合が高まっている。国民の摂取カロリーがほぼ一定に達した1949年の動物性食品平均摂取量を100とすると,1961年のそれは222であり,驚くべき変化であることがわかる。プリン体代謝の異常のある者が多量の肉類,内臓など高プリン食をとると痛風を発症するので,わが国の痛風患者は当然増加したものと考えられる。事実,報告された痛風患者は年々増加している(御巫)。ただし,表面に表われた痛風患者数の増加は,患者の絶対数が増加したためのみでなく,診断を下す医師の関心が高まったことも与って力があるものと思われる。しかし,一般的に言うと,日本人が痛風になることはほとんどないと言う誤った見解が永らく支配的であったためか,今日でも痛風が見逃されている場合はかなり多い。表1は東大物療内科を訪れた痛風患者の来院前病名である。最も多いのは54例中40例(74%)を占めるリウマチ,慢性関節リウマチ,リウマチ様関節炎の病名である。来院前に痛風という病名が与えられていた者は,その疑いをも含めてわずかに11例に過ぎない。リウマチと痛風とでは食餌療法も薬物療法もまつたく異なるものであり,より早く正しい診断が下されなければならない。しかも,痛風症例の大部分は型通りの症状,経過を示し,診断を下すのにそれほど困難なものではない。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.