ニュース 厚生省記者席より
国産生ワクチンの波紋/オリンピックをひかえて防疫対策を
Q
pp.204,225
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200265
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この夏の流行期をひかえ,2月から全国いっせいに国産生ワクチンの投与が始った。第1回分として310万人の乳幼児に飲ます計画だが,3月末までには,大体60%前後が服用を完了する見通しである。もともと生ワクチン服用は,地域ごとの免疫率を高めて,小児マヒ・ビールスの侵入を防ぐ,という社会防衛の立場から行なわれているものだが,厚生省では「十分な防衛態勢を築くためにはせめて80%くらいの服用率が必要だ」という見方をしている。でなければせっかくの砦から水がもれ,そこから病原ビールスが入りこんでくるおそれがあるというわけだ。
たしかに,例年になく生ワクチン投与のテンポは遅い。初めての国産生ワクチンに対する不安が一般の母親の間に生れてきたからで,「先生,この子に生ワクチンを飲ませても,本当に大丈夫なんでしょうか」と問いつめられて,返答につまったという,ある開業医の話も聞いた。いったい,どうしてこんな不安が持ち上がったのか。なぜ,実際の服用を始めたあとになって生ワクチンの安全性が国会の論議にまで持込まれたのか。そんなところに,この騒ぎの本質を解くカギがあるような気がする。
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