連載 私は赤ちやん・8
オリンピック
田村 昭子
1
1元東京警察病院高看学院
pp.35
発行日 1964年12月1日
Published Date 1964/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202882
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オリンピックは昨日終わったというのに,大人たちはその感激いまださめやらぬ様子.お兄ちゃんときたら,毎日毎日オリンピックごっこである.そのお遊びにボクも一役仲間入りするのだからたいしたものだろう.ボクも参加する競技に重量あげがある.
そもそもは何気なく野球のバットをもち上げたところ,ママが騒ぎはじめた.「おばあちゃん,ヨシタカちゃんウンウン言ってバットもち上げていますよ.これ重量あげの真似かしら」「どれどれ,そうよ重量あげしちょるよこの子は.テレビで習ったのだよ.たいしたものだね」これ以来「はーい,重量あげしてごらんなさい.ホーラ,ウーン」ママもおばあちゃんも言いはじめる.夜になると,パパまでも面白がっているように掛声をかける.これも親孝行のはじまりと思い,「重量あげの掛声があれば,いつでも高々と手をあげることにした.ところが,お兄ちゃんはさらに「ダウン」という.「違うのよ,赤ちゃんダウンって言ってから下ろすのよと」親切に教えてくれるがなかなかタイミングよく行かない.また始まった,重量あげが.
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