視座
オリンピック騒動に思う
谷口 昇
1
Noboru TANIGUCHI
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科整形外科学
pp.1215
発行日 2021年10月25日
Published Date 2021/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202152
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昨年からのコロナ禍であるが,一向に収まる気配がない.本稿を書いている時点で第5波の到来が懸念され,オリンピック直前にして遂に東京都で4度目の緊急事態宣言が発令された.オリンピック開催のため,すべてが犠牲にされている感が否めない.IOCとの契約の中に中止に伴う莫大な違約金の項目がある,あるいは誘致活動に注ぎ込んだ相当な額を回収せざるを得ないなど,国民に伝えられない事情が往々にしてあるのであろうが,その都度営業時間の短縮要請に振り回される飲食店はたまったものでない.しかも今回の発令期間はオリンピック開催期間を丸々含んでおり,まさにオリンピックを滞りなく行うための自粛期間ともいえる.オリンピックなどなければよかったということになるが,今となっては後の祭りである.
オリンピックを開催することで潤う人たちは必ずいるはずであり,政府に働きかけて強力に開催を推進しているに違いない.政府は,次の選挙で全面的な協力を得られることと,一部恩恵に預かることを見返りに,彼らに対して忖度した施策を行っても不思議ではない.いわゆる「大人の事情」ということになろうが,それらは国民全体の利益とはかけ離れた次元の話である.そして,最終的にその皺寄せが及ぶのは政府に忠直な国民ということになる.
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